先日の開発会議の場において出席役員全員が同意して決定した案件について、稟議書にまとめて予算申請と共に提出したが、社長から思わぬクレームが付いた。新しい製品の大臣認定を貰う内容で、今期の予算からは社長の指示で削られていた案件だった。しかし、今後の展開としてやはり取得しておきたいということで、開発会議でサルベージ提案し、予算を別途つけるということで会議の了承を得たはずだったのだが、その場にいたはずの社長から「予算を期の途中で別途つけるなんてとんでもない話だ。非常識である!今ある予算内で何とかせよ」とのお言葉。怒鳴りつけられたK部長によれば、何か相当イライラしていたらしいのだが、それにしてもである。確かに、普通に考えたら決められた予算内で業務を推進するのが常識といえば常識であり、予算が途中から付くのはおかしいかもしれない。しかし、あの場で今期の予算に余裕がなく、この案件を実行するに当たっては追加の予算が必要ということは場の全員が認識し、その上で了承を得られたはずだった。話が違うのである。K部長も「何もするなということなのか!!」と憤りを隠しきれない様子だった。その場は予算内で調整しますと言って了解を得たのだが、やはり納得がいかない。そもそも今期の予算のほとんどは申請費用であり、どれも役所相手に支払う費用のため削る余地は無かったにも関わらず社長が強引に削ってしまったのである。その時も後で申請すれば予算をつけるとも言っていた。開発スタッフ全員がため息をつき、意気消沈してしまった。
帰りの車の中で、少し冷えた頭で考えてみた。社長のあの言いようは、裏を返せば今期の業績に全く余裕が見込めないのかもしれない。非常に厳しい状況だからこそ、追加の予算申請を厳しい態度で却下したのかもしれない。よくよく考えてみると、予算申請に当たってあまりに考え無しな、独りよがりな理屈で臨んでいたかも知れない。昔の開発はいかに上の人間に認めてもらうか知恵を絞っていたのを思い出した。ここ最近は開発が重んじられてきたこともありちょっと調子に乗っていたようだ。正当な理由を添えてやりたいことを申請すれば通してもらえると、ちょっと傲慢になっていたかもしれない。ひとそれぞれ考えはあるだろうが、他の開発スタッフがやるせなさに打ちひしがれている中、そんなことを考えた。もう一度開発の原点に戻る必要があるな。各部店が血の滲むような思いをして出した利益を少しずつわけてもらって捻出した開発予算であるという考え方。税金対策などの、実際の理由はともかく、そういう謙虚な姿勢をもう一度取り戻さねば。