富士登山研修

朝4時に起きて仕度を整え、軽い朝食を摂って出かける。モチベーションは著しく低い。有志の研修会と言いつつも実態は強制参加の研修会。しかも富士登山。プライベートなら良かったのだが。何か理由をつけて欠席しようとも考えていたが、それを見透かされたかのように本社組の幹事を命ぜられたので簡単には欠席も出来ない。
会社に着くと、ちょうどY専務やK部長も来たところであった。お二人とも、それなりに厳選したかのような登山ウェアに身を包んでいる。しかし、K部長はこういう研修に慣れているのか、サンダル履きで来ていた。なるほど、1日中登山靴を履いているのは確かにキツイものだ。そこまで考えていたとは恐れ入った。次回は私もその辺まで考えて準備しよう。集合場所には続々と社員が集合。みなヤケクソ気味な、無理やりな明るさと気合に満ちた顔をしている。私もきっとそんな顔をしていたのだろうな。遅れてやってきて周囲の爆笑を買っていたのがF理事。事前に宣言してはいたが、本当に作業着で来た。しかも麦藁帽子。まるでこれから農作業という出で立ちである。おかげでバスの中の雰囲気がちょっと明るくなった。狙ってやっていたとしたら凄い。
自分の班の点呼を取り、事務局に報告して出発。途中、千種にある事務所の人と、社長を拾って行った。また、浜名湖SAで三河と静岡方面の支店の社員を拾い、富士駅で東京・大阪支店の社員を拾った。ついでに飲料水の補給も行う。5合目まで向かう道すがら、社長から研修の趣旨説明。この場ではっきりこれは研修会であるとのたまった。では、研修中の事故は労災扱いになるということでよろしいのかな?有志の研修会と言い切ったところは腹が立つ。
5合目に着いてバスから降りると、外は意外に寒い。また、天候が極めて怪しく、準備を整えている間にもポツポツと降って来た。更に集合場所から出発って時に、突然の雷雨に見舞われた。中止かなと思っていたら、ガイドさんは「では行きましょう」と登山を強行。この天候で出発して大丈夫かと思いながら、私は社長と同じ1番手の班に割り振られていたので仕方なく付いて行った。雨は途中から大きな雹に変わり、雷も一段と激しくなる。富士の雷で怖いのは、稲妻が水平に走るところか。稲光と雷鳴がほぼ同時だったので相当近くに落ちていたのだろう。いつ落雷を受けてもおかしくないなと思っていたら、6合目で雷に打たれたという人が担架で運ばれて行っていた。顔面蒼白で血の気が無かったが大丈夫だったのだろうか。雷に直接打たれたとも、近くに落ちて驚いた拍子に転んだとも言われていたが、真相はどうだったのか。しばらく6合目で足止めを食ったが、ガイドさんが「この雷雨はあと20分もすれば通過する。より安全な上に移動しましょう」と登山を再開。
確かに、ガイドさんの言うとおり、6合目を過ぎる頃から雷は遠くなり、雹も止んで来た。先ほどまで上が全く見えなかったが、今日の目標である8合目の山小屋も見えるようになってきた。目標がはっきり見えると俄然、やる気も出てくる。どっちみち引き返せないのだから登るしかないのだ。だったら少しでもゴールに近づきたい。頑張ろう。
ガイドさんが言うには、富士山は脚力で登る山ではなく、心肺能力で登る山なのだそうだ。呼吸さえしっかりしてれば誰でも登れるとのこと。実際、ガイドさんの指示通りに、呼吸を意識しながら登り、少しでも息苦しくなったら立ち止まって深呼吸を実践していたら意外に楽だった。登山靴は、古かったせいか皮製なのに雨が染込み、靴の中はぐちょぐちょになってしまっていたが、トレッキングパンツを購入した店のスタッフが薦めた専用靴下が靴によく馴染み、濡れているにも関わらず靴擦れを起すことなくフィットしたので快調に登れた。いろいろと専門家の意見というのは素直に聞くべきだと思った。
8合目には予定では5時半には着くはずだったが、実際には6時半になってしまった。山小屋のルールでは6時以降は食事は出せないとのことだったが、JTBが交渉して無理を推して出していただいた。山小屋スタッフはかなり怒っていたようだったが…。出された食事はレンジでチンのカレーだったが、とても美味く感じた。社長がウィスキーを回し始め、酒盛りになりそうな雰囲気になったら、山小屋スタッフが気配を察知して「食べたらさっさと片付けてください」と怒気を含んだ言い方で注意してきたのには笑った。社長もどこでも我侭が通用すると思っちゃいけないね。
宿泊は狭い押入れのような2段部屋で1部屋4.5畳程度のところに9人が雑魚寝。狭くて息苦しかったのと軽い高山病にかかっていてか寝入ると呼吸困難というのを繰り返して結局一睡も出来ず。他の人では気持ち悪くなって吐いていた人もいた。大丈夫だろうか。宿泊客は、トイレが無料だったのが助かる。通過客は1回200円かかるのだ。ふと思ったのだが、お金を入れないと送風機が動かない浄化槽というのはどうだろう?
ちょっと写真