報道のありよう

岡山県岡山市のJR岡山駅で38歳の県職員の方が18歳の少年にホームから突き落とされ、電車にはねられた後死亡したという事件について。亡くなった男性は非常に気の毒であり、残された遺族、特に幼い子供達のことを思うと胸が締め付けられそうな思いになる。男性の父の、記者会見での発言には、被害者の肉親でありながらあのような発言が出来ることに強く胸を打たれた。犯人の少年に対しては非常に憤りを感じるのだが、ただ、彼の報道のされ方には少々疑問を感じる。
ことさらに「人を殺せば刑務所に入れると思った」という供述のみを強調し、少年の異常性を誇張していたがあれはいかがなものか。他の報道によれば、少年が過去に長い間苛められていたことや、大学進学を家庭の事情で断念させられたこと、就職活動がうまくいっていないことなども併せて報道されていたが、その前置きも無しに異常性を強調するのはフェアな報道ではない。少年の行為は許し難いし、決して彼を養護する気は無いのだが、ただ、少年の置かれていた立場を考えると、相当追い詰められていたのではないか。私も幸いにして浪人はしなかったものの、受験した大学が全て駄目だったとき、これからどうすればいいのか分からなくなり頭の中が真っ白になった思い出がある。だから、考えを変えるにはちょっとぎりぎりの時期に進路変更を余儀なくされ、就職活動も上手くいっていなかった少年の精神的な状況は分からないでもない。今の受験制度がどう変わっているのかは知らないが、収入が無くとも進学できる制度はあったのではないか?あったのなら、周囲はフォローしてやれなかったのか。その辺の追求と解決策を講ずることが必要なのではないか。そういった点を検証することなく異常性だけを強調した報道は、いかがなものか。