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風呂に入っていると、J君が「僕、小学校に入ってから友達がすごく増えたよ」と嬉しそうに言った。
「ん?」と聞き返すと「だって僕、保育園のときは遠かったからぜんぜん友達いなかったでしょ?今は遊べる友達がいっぱいいるもんね」。
「何人、友達はいるの?」と聞いてみたら「ん〜。20人くらいかな」。
確かにそうだ。保育園のときは、近所の保育園や幼稚園が定員いっぱいで止むを得ず遠くの保育園に車で通っていたのだ。だから、友達はいるにはいたが、休みの日などに一緒に遊ぶような友達はいなかったのだ。だから、今の状況が嬉しいのだろう。
そうかそうか、うんうんと聞いていたら、続けてJ君が言うことにゃ、「でも、僕最近困ってるんだ」だと。
「何を?」と聞くと「頭が悪いのも困るけど、頭が良すぎるのも困るんだよね〜」だって。
何を言い出すのかこいつはと思いながら「どういう意味?」と言葉を続けさせた。
「授業のときとかさー。みんなが分からないところを僕に聞きにくるんだ。頭がいいのも大変」とため息混じりにちょっと自慢げに言うJ君。
…。ここからちょっとやんわりと説教モード。
「J君さぁ、まさかそんなことを友達の前で言ってないよね?」と静かに言うと、「え?なんで」とJ君。
「勉強が出来るのと、頭がいいのとは、似てるけど全然違うよ?」「わかってるよそんなこと…」。J君の声のトーンが落ちてきた。
「小学校3年生くらいまでならいいけどね。そういうのをひけらかすのって、そろそろ嫌がる子が出てくると思うんだ」「…」。
「そういう子からしたら、J君が頭がいいのを自慢したらどう思うかわかるか?」「え…?」。「『どーせ俺はお前より頭が悪いですよ』って心では思ってるかもしれないよ」「…」。
「お前と仲良しのT君がそう思ってたらどうする?」「…」。あ、俯き始めた。
「お前が自分のことをそう思うのは自由だ。だけどね。ひけらかすのはどうかな。本当に頭のいい人は、そういうことを自慢するとどういうことになるか分かってるから言わないんだよ。結果で示して周りにそう思わせるのさ。自分から言う人には、誰も頭がいいなんて思わないと、お父さんは思うよ」。あ、体操座りでしょげはじめた。
実はこの話は家庭訪問で先生から聞かされていたので、いつか注意してやらねばと思っていたのだ。更に止めで、「同じ小学校2年の頃で考えると、弟のR君の方が頭がいいと思うぞ」。え?っと驚いた顔するJ君。「確かにR君は全然勉強できないし、一見馬鹿だ。だけど、周りをとてもよく見ていて、あっと驚くような行動をとることも多い。あいつは見かけによらず頭は相当いいよ」。馬鹿な弟と思っていたのは図星らしく、そんなR君が自分より頭がいいと言われて動揺した感じだった。J君はすぐ調子に乗るからね。そろそろガツンと一発言わないととは思っていたのだ。
J君は確かに頭がいい。でも頭の切れる馬鹿にはなってほしくない。だから、敢えて禁じ手の兄弟比較をした。当面は親がしっかり律しなければと思った。