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昨日は博士号取得見込みの学生さんが、本人たっての希望で職場見学に来るということで、技術部門の仕事内容の説明および質疑応答その他を行い、その学生さんが雇う価値があるかどうか見極める役を仰せつかった。急な話だったので何を話したものかと迷ったが、上からは差し支えのない範囲で仕事の内容を説明し、逆に本人の本音のところでお希望を聞きだして欲しいとのことだったのでざっくばらんに適当に済ますことにした。面談の担当者は同僚のM主任と私の2人である。
学生さんといっても今年28になる人であり、博士号を持つことになる人だから、かなりの人物を想像していたのだが、その一方で、そんな優秀な人が何故うちなんかにという疑問もあった。私の知ってる範囲での博士号を持つ人というのは、かなり癖のある人物であり、非常にアグレッシブな人たちという印象がある。実際そういう人たちしか私の知人ではいない。確かに学会等でライバル達からの熾烈極まりない厳しい質問攻めを消化しきって見せる人たちであるのだから、パワーのある人でなければドクターなんてなれっこないだろう。
果たして、当の学生さんはというと、一言で言えば拍子抜けであった。恐ろしく大人しい。声も小さい。目に意地の強さを感じたものの、終始控えめな発言ばかりであった。やりたい仕事の希望は言うのだが、どこか漠然としていて、結局何をしたいのかよくわからない。おまけに、御社の製品開発部門に大変興味があると話をしていた割に、何を作っているのか分からないという。忙しくて下調べをする時間もなかったのだろうが、イマイチ真剣みが感じられなかった。
他に気になった点で、話していても私の目を見ている時間が非常に短く、視線が泳いでいることが多いというのがあった。私はもう癖になっているが、人と話しをするときは正面から目を見据えている。相手の話を聞いているとき、自分が話すときは目を見ている。別に特別なことではなく、こんなことは会社人間として、いや大人として常識であると思っている。それゆえ、彼女のその振る舞いには「ちゃんと話を聞いているのか?」「つまらない話だと思っているのか?」という疑念が沸き起こり、非常に印象が悪かった。相槌も「はい…」と気の抜けた言い方なのも気になった。曲がりなりにも面談に来ているのだから、元気にハキハキと言えないものなのか。どうも大人として基本的な部分でいろいろ忘れ物があるように思われて仕方がなかった。
面談が終わったときのあいさつは結構大きな声で言っていたが、自分から希望して職場見学を開いてもらったのに「お忙しいところありがとうございました」の一言も無かった。四大卒くらいなら入社後にみっちり鍛えるので大目にも見れたが、今28歳にもなってそんなことでは先が思いやられそうだった。
面談後、上司と打ち合わせしたが、結論としてこの人にはご遠慮願おうということになった。上司も意見はほぼ一緒で、
- 年齢に見合った常識を持ち合わせていないこと。
- 態度に覇気や必死さが現れておらず、本気で入社したいのかどうかよく分からなかったこと。
- ネット社会の今において、就職活動の下調べがまったく出来ていなかったこと。
ということを理由に挙げていた。持っている専門知識と博士号の肩書きは惜しいが、本人の態度が年齢不相応だったので仕方が無いだろうなと思った。来年は是非、よい人材が見つかるといいなと思う。