8合目〜登頂〜下山

午前0時に起床して、登山準備。頭が痛かったので辞退しようかとも思ったが、一応頭痛薬は飲んだし、何より恩師であるK部長が登山準備を始めていたのでこれは頑張らねばと思って気を奮い立たせて準備した。中堅どころの社員には辞退者も続出。結果的に40人中10人が登頂を辞退。朝までここで休むことになった。元気のある人は外に集合して点呼。全く乾いてなくてずぶ濡れの登山靴の冷たさが気を引き締めてくれる。5合目に居た時とは代わり、空は満天の星。天の川のはっきり見える。時折、流れ星も見える。この時、ようやく富士山に登ってちょっと良かったかなと思い始めた。ガイドさんは「ゆっくり登るので、星空や周囲の光景を楽しんで登ってください」と言ってくれた。一歩一歩、足元を確かめながら急勾配を登るのはスローペースといえど結構キツく、伊達に標高3200m超では無かった。あのゴルフで鍛えて体力に自信ありの社長ですら、ちょっと弱音を吐いていたくらいだから相当の物だったと思う。最後の100mにもなると、もう急勾配で、うっかり立ちくらみもできない状況だったが、ひたすら上だけを見て登った。やがて、頂上を示す鳥居が見えてきて、無事通過、登頂成功となった。
頂上は、とにかく寒かった。昨日の雹が山を冷やしてしまったらしく、ガイドさん曰くこの季節では一番の冷え込みだそうだ。社長は達成感からハイになってしまい、さらに真の頂上である富士観測所の方へ行こうと呼びかけていたが、全く元気のない私は適当に返事をして無視しておいた。東を見るともう少し頑張ればダイレクトに御来光が拝めそうだったが、その気力もなかったので登ってすぐのところから一番近いところにある高台に陣取って、寒さに凍えながら御来光を撮った。

御来光を撮ってからは、何か登頂の記念をと探し、金剛杖への登頂の印を押して貰い、あとは下山の合図を待った。社長はハイになっており、せっかちにも集合時間を早めて記念撮影を行い、遅れてきた奴は登頂できなかったことにするなどと訳の分からないことを言い出した。このへんから社長の奇行が出てきた。
ゆっくり景色を楽しみながら下山。帰りは御殿場方面で、斜面はなだらかで砂利なので比較的楽であった。その気になれば走り下りることも出来そうで、実際他の若い登山客は奇声を上げながら駆け下りて行っていた。ただ、S店長が足の指を痛めてしまったので、ペースを合わせてゆっくり下りた。ここで、社長、トイレに行きたいからと皆が休憩している中、さっさと一人で下りていき、以降我々を下で待つと言うことなくどんどん先に進んでしまった。何たることか。途中、御殿場口と富士宮口に分かれる分岐点があるので、社長が間違えて御殿場口へ下りて行っていないかガイドさんが大変心配していた。
対照的だったのがK部長。足を痛めたS店長に付き添ってゆっくり下りていたのだ。我々も6合目手前の広場でK部長とS店長が追いつくのを待っていた。しかし社長から総務のT部長へは容赦なく「まだ下りてこないのか」「早く下りてこい」の罵倒。S部長なんかは「オーナー様がお呼びだからあと10分したら出よう!」と笑いながら怒って叫んでいた。
6合目手前の広場からは一旦上に登らねばならないが、そこからは昨日通った道を通るのみ。バスの待つ5合目に着いたときに、やっと下りてこられたという安堵感でどっと身体が重くなった。よく考えたら寝ていないんだよね。社長はずいぶんせかしていたが、それでも全員下りてきたのが10時半くらいであり、予定よりも1時間早く到着できていた。
その後は、ガイドさんを会社まで送り、我々は温泉レジャーランドみたいなところに行って汗を洗い流して、昼食を採り、帰り路についた。昼食時に社長が今回の研修で得られた物について「チームワークのなんたるか」とか言ってたけど、皆鼻で笑いながら聞いていただろうな。「おまえが言うな」と。帰りのバスも社長が下りてからはF常務などが、社長への不満を爆発させていた。どうも5合目で皆を待っていたときに、怪我を押して登ったS店長のことをボロクソに言い、また8合目でリタイアして断念した連中を根性をたたき直す必要があるなどと言っていたらしいのだ。高山病はしょうがないだろうに。この人は自分が病気にならなければ、病気の人のことが思いやれない人なんだろうな。ただただ疲れる研修だった。登頂したのに達成感が無いのは、こういうことがあったからだろう。ぶち壊しですよ、社長。
おまけ
火星のような風景@御殿場側砂走り