朝5時に起き、朝食を取る間も無く身支度を整え、家族全員車に乗り込んだ。今日は長野の飯田市でジャガイモ掘りをするのである。このイベント自体は親父たちが申し込んだオーナー制林檎狩りの運営団体によるものであったが、行ってみたら地元の小学生相手のイベントに一緒に参加してみてくださいという趣旨だった。集合場所は旧杵原学校。文化財の指定を受けており、来年新春に公開される映画のロケ地にもなったところだ。




ちょっと露出を上げすぎてしまった。
現地へは10時集合だったが、余裕を見込みすぎて9時には着いてしまった。しかし、地元の子ども達のイベントは9時から始まっており、是非ご一緒に、と勧められるままに説明会に参加し、そのままじゃがいも掘りに出発した。千葉から来る人も居たらしいが、そちらは時間通りに来るということで後で連れて来るということだった。そんなわけで、J君とR君は地元の小学生に混じって参加。土を触りたくないR君はずっと嫁さんの掘るのを眺めているだけだったが、J君は熱心に土を穿り返していた。


あいにく、今年のジャガイモの出来栄えは、水はけの悪さと、悪天候続きで半分以上の芋が腐ってしまっており、散々だった。確か畑に来た時に異臭がしていたので、おかしいなとは思っていたのだが…。今年は上手くいかなかったなーなどとぼやいたり、小学生を叱り付けたりしている様子を見ると、どうも運営団体の人はプロの農業の人ではなく、学校の先生だったらしい。プロならこうはならないそうな。そもそも時期が外れているとも。それでもなんとか状態のいいジャガイモをかき集めてみると、各人お持ち帰りの分と、今日のお昼に蒸かす分は十分に収穫できていた。特にお金払って遠くはるばるからきた私たちと千葉からの人の2組に対しては優先的に芋をまわしてもらった。
さて、その後は小学生たちのイベントに参加し、土器作りをやった。初めは嫌がっていた坊たち2人も、他にやることが無いと観念したのか、それとも純粋に面白そうと思ったのか積極的に粘土こねに精を出した。R君は嫁さんと一緒に電車を作った。J君は先生からいろいろアドバイスを貰いながら縄文土器のようなものを作った。結構難しい形状に挑戦したらしく、指導していた先生から褒められていた。


これから1ヶ月ほど陰干ししてから、縄文人の焼き方で焼くそうだ。焼くところに立ち会うことはできそうにないが、11月の林檎狩りの時に申し出れば引き渡してくれるそうだ。
坊たちが粘土をこねている間、暇そうに学校内を散歩していたら主催団体の会長さんに声をかけられ、いろいろと案内してもらった。今土器作りに使っている粘土は、この近くにある縄文時代の遺跡の場所から集めた土に他の土地の礫を混ぜて作ったのだそうだ。また、話をしているうちに、親父の実家を知っている人とも会ってしまい、世の中狭いなぁと思った。従姉妹3姉妹の各々の旦那の名前まで言われたのには参った。しかし、その人も親父とその息子である私のことはほとんど知らなかったのだけれど。最後に蒸かしたてのジャガイモを味見させてもらった。タレは信州味噌とマヨネーズを混ぜた味噌マヨソース。掘り立て蒸かしたてを食べるのは初めてだったが、たぶん今まで食べた芋では一番美味しかったように感じた。土の香り、芋の風味、ホクホク感全てが飛びぬけて美味かった。
粘土も練りあがった頃、作品を陰干しの場所に移し、お待ちかねの流しソーメン+ジャガイモ。


実は流しソーメンも初めてであった。これが意外に難しかった。掬い取るのはそんなに難しくない。しかしちょっとでも欲張って箸の引き上げのタイミングを誤ると、加速度的にソーメンが堆積し、竹を割って作った樋から溢れてしまうのだ。私も一度溢れさせかけたが、目の前のソーメンを条件反射的に取ろうとしてしまう、欲張りな小学生があちらこちらで溢れさせてしまい、大変なことになっていた。「自分の器のソーメンを空にしてから、次のソーメンを取りなさい!」と先生たちも大声で注意して回っていた。もっとも、その甲斐なく、結構な量のソーメンが樋から溢れてソーメンの山を築いていたが。
ソーメンもジャガイモも食べ腹が一杯になったところで、主催者に挨拶して帰る事にした。まだ昼を少し回っただけだったが、耳を澄ますとヒグラシの鳴き声が聞こえる。山はいいねぇ。夏は一度は山に行ってヒグラシの声を聴かないと気がすまない。あの郷愁感漂う、涼しげで寂しげな声がいい。これに川のせせらぎの音が足されて、目の前に川魚の塩焼きと良く冷えたビールがあったら言うことなし。その光景を想像してちょっと立ち眩みをしてしまった午後であった。
帰りは高速を使わず、国道153号線を使って名古屋へ向かった。少し日がかげるとすぐ山からヒグラシの声が聞こえる。だからR153は好きだ。帰りに有名な蕎麦屋に寄りたかったが、昼のソーメンとジャガイモが多かったのと、店の名前を聞いていなかったのとで諦めた。道の駅各駅停車で帰ったが、各々で必ずお土産を買った。さっきの味噌マヨが美味しかったので少し高かったが信州味噌も買った。ネバーランドでは、ちょっと川遊びもした。

そういえば道の駅でちょっと珍しいものを見かけた。これ。


たしかオトシブミという昆虫の巣というか作品。葉を綺麗に折りたたんで卵を産みつけたもの。テレビや図鑑では何度も見たが、現物は初めて見た。珍しいものを見たと喜んでいたら、J君からそんな物に気が付くお父さんのほうが凄いと言われてしまった。これは、褒められたのか、な?

クタクタになって帰ったのだけれど、祭囃子の音が聞こえたので、ついつい見に行ってしまった。ジャガイモを洗う作業をしていた嫁からは不評を買ってしまったが。ここまで私を惹きつけたのは、自分が会社の決起大会のイベントで演奏した覚えのある和太鼓の演目が流れていたから。西友デパートの駐車場でやっていたのだが、久々に見る和太鼓の生演奏は凄かった。和太鼓は、魂に響く音がある。会社で叩いたのがもう3年も前。また、叩きたいなぁという衝動に駆られた。